2011年6月26日日曜日

東日本遠征奥只見編:神々の滴を集めた川を下る

曜日に桧枝岐川を堪能した我々は、クリークガールズセンターポジションが確定した南極3号、Woods夫妻、柿の種仙人、へたっぴカヤッカー、Actonで宿泊先が明かされていないミステリアスな宿舎へ移動しました。宿の選定には人一倍の拘りを持つへやっぴカヤッカーさんが選んだ宿舎なので不安は全くありません。連れていかれた宿は季の郷 湯ら郷。堂々たる構え。なかなか立派なホテルです。建物正面の庭園は、見通しがいい運動場のような大きさです。ゴルフコースのように手入れが行き届いた芝生が視界一杯に広がっています。














ひっそりとしたロケーションなのに、ホテルはいやに大きい。



ホテルの正面から見た風景。すべてこの施設の敷地。
どこからでも絵になる男、Woods。


日はいよいよ奥只見の秘境へ。





翌日は快晴。素晴らしい天気です。こういった天候はすべての免罪符。気持ちは高まる一方です。残念ながらクリークガールズセンターポジションの南極3号は仕事のため、漕がずに帰京。残念。

さて、今回我々のガイドを引き受けてくれたのはUCDIのアキさん。奥只見の奥地にひっそり佇む川をガイドしてくれました。


漁協関係者とちょっとしたトラブルがあり、漁業資源保護の観点から禁漁区間のカヤック漕行中止と、(カヤッカーが来ないために)ブログで川の名前を明かさないで欲しいという要請を受けました。双方色々と言い分はありますが、先方の要請に従うことにしました。

後日新潟県内水漁業調整規則に目を通しましたが、当然ながらカヤッカーを排斥するような規定はありませんでした。沢登りでもポピュラーな川ですので、カヤッカーだけ入渓を拒むのは腑に落ちませんでしたが、双方大人の対応で納得しました。

今回は先方が非常に紳士的な対応だったので、要請を受け入れ川下りを途中で断念しました。いずれにせよ、この川はいままで僕が漕いだ川の中では最上級の透明度。この川の源は人気がまったくない奥会津の山々から流入している神々の滴です。大腸菌に汚染されているこは全く考えられません。へたっぴカヤッカーと僕は自信を持って神の水を飲み干しました。























この川の保護には開高健が関わっていた事を後になって知りました。「夏の闇」の執筆で、銀山平に2か月滞在していたそうです。とても短い距離でしたが、まさに神の滴を集めたような川を下れて幸せでした。もう二度とこの川を下ることはないでしょう。

追記:銀山平付近の放射線量は0.07μSV/Hでした。

2011年6月25日土曜日

東日本遠征桧枝岐川編:カヤック旅情

珂川上流を漕ぎぎった一行は、一路桧枝岐へ移動しました。桧枝岐へ出向く機会があれば、出発前に必ず中川善之助「桃源境桧枝岐村」に目を通します。昭和16年刊行の古い書籍ですが、中川が描いた桧枝岐までの道すがらの情景思い浮かべながら車を運転するのは感慨深いものがあります。
内川から一里半で大桃というやや大きな部落に着く。ここを過ぎて半道くらいまでは田も畑もある。
「こんちわ」と麻を刈っている農婦に言葉をかけると、「鉱山かネ」と訊かれた。この辺から館岩

方面へかけては、足尾銅山や西沢金山からの鉱脈が伸びているというのでかなり鉱山師が
入り込むらしい。この辺で桧枝岐村の役場の人が自転車で私に追いつき、私のルックザツクを
車につけて先に村へ行ってくれた。

大桃分の耕地がなくなると、もう自然の他は何もない。人手のかかったものは足の下の沼田

街道だけといってもよい。道の左側にはいつも桧枝岐川の急流がある。右側はすぐ山裾で、
時々遙か前方の山間から会津駒の雄姿と、それから南に延びた稜線の最後に三ッ岩のトツケ
が見える。川の対岸も千三、四百米の山を連ねた屏風である。左も右も前も後も全く山又山、
ただ足許の谷深く流れる桧枝岐川だけが路を切開いてくれる。ここまで来るともう人間には滅多
逢わない。


六地蔵に紛れ込む元やん。この写真、とても気に入ってます。


















桧枝岐歌舞伎の舞台。周囲は半円状のコロシアムになっている。

桧枝岐はかつて中川が描いた辺境の地というイメージはもう全くありませんが、この地を支配する気には何か特別なものを感じます。桧枝岐は漕いで楽しいのですが、民族学的にも濃密なこの土地をほんの少し知ってから漕ぐと、土地の精霊達と交流出来るような不思議な感覚で川を下れます。中川は桧枝岐川をこのように表現しています。

桧枝岐川はいつも深い谷の下に岩を噛んで流れている。長瀞のようになった所もあり、寝覚
(ねざめ)の床のような所もある。瀬も滝もあり、時には淀もあって見飽きない川だ、その川面には
セキレイが尾を振って跳ね廻っている。その谷の上空をイワツバメの群が流星の様に流れ来り
流れ去る。時々路傍の叢からヤマドリがチョコチョコと行手の路に現われて、大急ぎに路を
横切って行く。またカケスが飛ぶ。ホオジロが鳴く。

今から70年前の文章ですが、カヤックに乗り水面の高さに目線を置いて広がる桧枝岐川の現在の風景と全く変わりません。

イナズマドロップを制覇した南極3号。クリークガールズのセンターポジション確定。
























さて、肝心のカヤックの方ですが、桧枝岐でもクリークガールズが圧倒的な存在感を示しました。日曜日から参加したクリークガールズのリーダー格、南極3号はイナズマドロップでも尻込みするチキンハートの男性陣を尻目に見事なラインでクリア。まったく頭が上がりません。









当日の様子については、へたっぴカヤッカーさん柿の種仙人さんのブログを参考にしてください。

話は前後しますが、那須から移動して前日泊まった宿は丸屋新館。今回の幹事、へたっぴカヤッカーが予約をしてくれました。部屋もきれいだし、食事は蕎麦を中心に据えた地元の料理のフルコース。もともとは土地の痩せた桧枝岐の質素な伝統的な郷土料理の数々が、豪華な会席料理としてアレンジされ、ふるまわれました。









































宿と食事には拘るのが我々の旅です。昨年の北海道遠征の際に宿泊したオーベルジェコムニに続いて、幹事のヘタッぴカヤッカーさんはいい宿を予約してくれました。

今回の桧枝岐は天候にも恵まれ、素晴らしいコンデションでした。旅館に泊まり、ゆったりとした旅情を味わいながらカヤックが出来るなんてまったく贅沢な旅です。参加者全員にとって忘れられない旅のひとつとなったようです。

桧枝岐川は険悪な箇所はないものの、レスキュー体制を完璧に整えて臨む必要があるそれなりのレベルの川です。この川に興味がある方はClass5がツアーを定期的に開催していますので、C5のツアーに参加されることをお勧めします。

追記:屏風岩付近での放射線量は0.1μSv/H程度でした。桧枝岐村村内中心部でもほぼ同様の値です。

2011年6月23日木曜日

東日本遠征那珂川上流編:クリークガールズ参上

征の始まり

今年6月にUSカヤックツアーを企画していました。日本からもアクセスが悪くないカリフォルニアの州都、サクラメント。サクラメントから車で1-2時間の範囲には、実はYouTubeでちょくちょく見かける有名な川が沢山あります。昨年の北海道遠征に引き続き今年は吉野遠征という話でツアー話はスタートしたのですが、僕が幹事を引き受け目的地を変更し、土地勘のあるカリフォルニアに遠征することになりました。

それなりの時間をかけて調べ、何度か現地カヤッカーとも連絡を取ってガイドを引き受けてくれるアウトフィッターを選び、内容をつめ始めたタイミングで不幸な震災に見舞われました。公共性、社会性の高い仕事に携わっている仲間も多く、長期の休暇が難しくなりUSツアーはやむなく来年に延期となりました。しかし半年以上前に折角押さえた休暇があるので、期間を短縮して震災の影響を受けた東北、北関東の川を漕ぐことになりました。これがそもそもの今回の遠征の始まりです。

6月18日土曜日。まず最初に向かった川が那珂川です。那珂川は関東では定番のツアーリバーですが、ことその上流となると漕がれた経験のある方は少ないのではないでしょうか。この区間は水位によって大きく表情を変える川です。川相については、「那珂川上流 カヤック」で検索して頂ければ参考になるサイトが沢山出てきます。


有名なラナパパが作った那珂川上流のリバーマップ。


大きな地図で見る
那珂川上流は視界がとても広がっていて、那須連峰のパノラマを背中にして下る雄大さがあります。何となく陰気なクリーク系の川にあっては異色の存在です。水位によって大きく表情を変える川ですが、前半はロックンロール。しかしその瀬も突然大きなウェーブやホールに変わります。今回は残念ながら水位が低く、ホールやウェーブにはお目にかかれませんでした。

2009年4月に出撃した時の写真。大雨後の増水のコンディション。写真は元やん。増水しても水が濁らないのに驚きました。当日の水位だと、いたる所に大きなホールやウェーブができます。当日の黒羽の水位は130cm。今回は平常時に近い68cm。因みにゴールの疎水公園で計測した放射線量は0.65μSv/H。約1mの高さで計測しました。報道の通りホットスポットになっているようです。今回は線量計を持参して計測しながら下りました。


















核心部イカの瀬のスカウティングも楽しそうです。

これが噂のクリークガールズ。今回はリーダー格の南極3号が足りない。




























今回は女性の参加率が多くてびっくりしました。那珂川上流はロックンロールなクリーキーなセクションや、水量によっては巨大ウェーブ、ホールが出来る区間で一筋縄ではいきません。今回参加したクリークガールズは蝶が舞うように瀬を渡り、蜂が刺すようにエディーを取り、しかし薔薇の気高さと美しさで那須の雄大な自然の中で圧倒的な存在感を示しました。実は那珂川での彼女達の華麗な舞を見た我々は、それが単なる予告編に過ぎないことが桧枝岐川で判明するのです。(つづく)

追記:那珂川上流は御岳よりレベルが上の川です。この川を下った経験者が同伴してレスキュー体制をしっかり整えて下るか、Class5カエルアドベンチャーのガイドで付きで下ることをお勧めします。なお、黒磯カヌークラブからもこの区間の危険情報が出ていますので、参考にしてください。

2011年6月15日水曜日

雄叫び共に水上を下る

6月12日はC5のツアーで水上に出撃してきました。利根川に出撃するのは今年2回目です。3月末に雪解けの赤城コースを堪能しましたが、今回は定番の水上コース。奥利根スキー場から銚子橋までのスリリングなコースを下ります。C5の水上ツアーは人気が高く、前回開催時は定員一杯で無念の門前払い。今度こそと心に決めていたものの、雨の予報が気になり申し込みをずっと引っ張っていました。実は僕は雨には滅法弱く、雨が降ったらActonは来ないという都市伝説さえ存在します。今回は日曜日は雨の予想でしたが、突然予報が晴れに変わりました。湯原の水位も土曜日の時点で330cmという丁度いい按配です。この二つの条件がマッチしていたので、土曜日に御岳で漕いでから慌てて柳本さんに連絡して申し込みました。



















前回のC5ツアーの水位は360cm。結構な水位ですね。350cm以上だと自主規制でラフトも出さない水位と聞いていますので、この水位は爆裂状態。ダイナマイト、マダムキラーではC5の常連さん4名で、賑やかな祭りが開催されたそうです。

今回の水位は漕ぎ出しで325cm。水位も先週に比較して大分落ち着きました。そして何より天気が良かった。決して快晴ではありませんが、薄日が川面に差し込む風情のある天候です。必然的に心拍数は増え、アドレナリン増量。こうなると声が自然と湧き出てきます、まるで中学の部活の時のように。だだあの当時の紅顔の美少年が全員50代になっただけなんです。何かが喉に絡んだような、ドーオっと言うオヤジ達の雄叫び。浮世の垢で汚れた声は、美しくはありません。しかし紅葉峡に突入する前の雄叫びで気合は十分です。これでいいんです。因みに今回の参加者は、へたっぴカヤッカー柿の種仙人府中人。どの面見ても、いぶし銀のいいオヤジ達です。

柿の種仙人の動画です。Qさんと並んでカヤック界の動画二大巨頭です。





















水量は先週よりは減ったとはいえ、ウェーブはデカイし、ホールもデカイ。今回はエディーを取りながら丁寧に下りました。



























































































今回は大きな祭りはありませんでしたが、踊り子1名が2回程祭りを開催しました。流石に柳本さんは前回踊り子4名同時祭りを捌いたただに、あれだけの流れでも人も艇も即座に回収し全体のペースが崩れることはありませんでした。あの荒れ狂う水上で、慌てず、確実にレスキューをこなせる人はそんなに多くないと思います。いいカヤックアウトフィッターの第一条件はレスキューのスピードと技だと思います。柳本さんは、この点はピカ一ですね。

水上は不幸な事故が何度も起きている区間なので、完璧なレスキュー体制を整えるかClass5のようなアウトフィッターにガイドしてもらうことをお薦めします。


みなさんお疲れ様。次回は桧枝岐だ!